横尾忠則展での「瀧のポストカード」インスタレーションは圧巻だった。12,000枚を壁面ばかりか天井にも張り巡らし、床に敷き詰められた鏡面によって曼荼羅図が出現したようだった。そこは、世界中の瀧が集まるサミット会場となっていた。それらの瀧の写真を撮った人々とそれを観る人との魂の交流が出現。こんなに多くのポストカードを収集した横尾忠則氏は瀧を統べる司祭のようだ。コレクションという英語訳に「集狂」を充ててもいい位だ。収集作業も、ある一定の数字を超えると自然に向うから押し寄せて来る。とにかくこの数量は尋常ではない。1996年にキリンアートスペース原宿、大阪道頓堀キリンミュージアムの2ヶ所で見て以来だから、今回は実に29年振りの遭遇となった。以下、白洲正子著「私の古寺巡礼」より~
清らかな水が老人を若返らせるという「復活」の思想は、神代から日本に存在した。いわゆる「變若水おちみず」の信仰で、みそぎもその一種に他ならない。水で身体を清めることによって、魂がよみがえると考えられていた。その中でも、深山から流れ出る清冽な瀧の水は,ことさら利き目があると信じられたであろう。そういう所から、瀧そのものを崇める信仰が起った。「那智の瀧」は、今でも瀧が御神体で、その前に鳥居が立っている。他にもそういう所はいくらもあって、人が知るほどの瀧は、すべて神格化されていたのではないかと思う。
- POSTED at 2021年04月10日 (土)