- POSTED at 2020年06月17日 (水)
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美術
鷹見泉石像(6月17日)
作者の渡辺崋山(寛政5年,1793~天保12年,1841)は、三河國田原藩の藩士の子で江戸に生まれた。父親の禄は僅小で、崋山は極貧の中で絵を描きそれを売って生計を支えたという。剣術にも秀でていたのであろう、運筆に一切の迷いがない。背景を描かない空間処理の巧さは宮本武蔵(二天)の傑作「古木鳴鵙図」を連想させる。西洋画の陰影法を取り入れてあると言われているが、一体崋山は当時のどの西洋画をみたというのであろうか?鷹見泉石(天明5年,1785~安政5年,1858)は、儒学者で幕府の能吏であって、あの大塩平八郎の乱を制圧した人物である。その怜悧な人間性を見事に崋山は「写して」いる。「源頼朝像」に比肩する凛とした空気感、品位と精神性の高さがひしひしと伝わってくる。泉石53歳の像で、崋山はその時44歳。蛮社の獄のきっかけとなったモリソン号事件の年である。愛知県の田原博物館でこの作品を見えるかと思いきや、「佐藤一斉像」と共に東京国立近代美術館の蔵という。