三島由紀夫がデルフィを訪れたのは昭和27年4月27,28日の兩日である。つまりサンフランシスコ講和条約が発効し、祖国日本が占領の軛から解放され主権を回復した日である。~この周知の馭者像の左腕は失はれ、右腕は二本の手綱を握っている。彼は都合四頭立の繋駕を馭してゐるわけである。今もこの青年は見えざる馬を馭して、その若々しい頰は緊張し、そのしっかりと見ひらかれた目は燃えている。~
この青年像は主権を回復した「新生日本」のあるべき姿である。一見美術批評の域を大きく出ていない文章ではあるが、そういうことが行間から透けて見えるのである。国家経営の手綱をしっかりと持ち、進む方向と速度は自分で決めるものだ。
- POSTED at 2021年02月16日 (火)