19世紀のはじめ、日本農業は、実に悲惨な状態にありました。200年の長期にわたってつづいた泰平の世は、あらゆる階層を問わず人々の間に贅沢と散財の風をもたらしました。怠惰な心が生じ、その直接の被害を受けたのは耕地でありました。多くの地方で土地からあがる収入は3分の2に減りました。かつて実り豊かであった土地には、アザミとイバラがはびこりました。耕地として残されたわずかな土地でもって、課せられた税のすべてをまかなわなければなりません。どの村にもひどい荒廃が見られるようになりました。正直に働くことがわずらわしくなった人々は、身を持ち崩すようになりました。慈愛に富む大地に豊かな恵みを求めようとはしなくなりました、代わって、望みない生活を維持するため、相互にごまかしあい、だましあって、わずかの必需品をえようとしました。諸悪の根源はすべて道徳にありました。「自然」は、その恥ずべき子供たちには報酬を与えず、ありとあらゆる災害を引き起こして、地におよぼしました。そのとき、「自然」の法と精神を同じくする一人の人物が生まれたのです。
- POSTED at 2021年07月23日 (金)